【プラークチャート】プラーク付着状況って何でしょうか?
新潟市西区の歯医者、歯科医|松田歯科医院の院長 松田拓己です。
【略歴】
平成2年 新潟大学歯学部卒業
平成2年~5年 新潟大学歯学部付属病院口腔外科勤務
平成5年~6年 長野赤十字病院口腔外科勤務
平成9年 新潟市西区小針にて松田歯科医院開業
歯磨きでプラーク(歯垢)が落としきれていない場所について、歯を上から見て前後外内のどの面にプラークが残っているか?を記録した表が記入されています。
歯周病の進行を食い止めるためには、まずご自身のお口の状態を知ることがとても大切なことです。
特に、歯周病とむし歯の原因となるお口の中の細菌はプラーク(歯垢)の中に大量に隠れ住んでいます。これはプラークを顕微鏡で1,500倍に拡大した画像です。丸い形や細長い形をした細菌が大量にひそんでいるのがよくわかります。
プラーク1mg(1gの1,000分の1でつまようじの先くらい)の中には1~10億の細菌が繁殖しているのです。
細菌が大量にひそんでいるプラーク(歯垢)が歯や歯ぐきのまわりに付いているために、むし歯や歯周病が進行していきます。
あなたにお渡しした歯科衛生実地指導の説明書をご覧になりながら、裏面の説明をお読みください。
歯垢の落としきれていない場所を患者さんに把握していただくことは、予防のためにとても重要なのですが、見慣れない表なのでわかりづらいという声をお聞きします。
歯科医院のスタッフは、歯を左右に大きく分けて前歯を「1番」~、奥の親知らずを「8番」と前から数えて何番目の歯になるかで区別しています。親知らずまで上下左右とも歯が揃っている方は、32本の歯が生えていることになりますが、かなりめずらしいですね。
右上の前歯を「右上の1番」、左下の糸切歯を「左下の3番」と呼ぶことになります。さらに歯を4つの面に分けて、歯みがきで注意していただきたい場所を細かく特定します。
お口の中心に近い面が「近心」面、
中心から遠い面が「遠心」面、
お口の外側に向いた面は「頬側または唇側」面、
お口の内側の面は「舌側または口蓋」面と呼びます。
左上の歯の場合、顔の中心は向かって左側になりますので図のような位置関係になります。
このように、一本の歯をさらに4つの面に分けてプラーク(歯垢)の残っている面が全体の20%以下であれば、ご自宅でのセルフケアは十分であるといわれています。
計算式
年をとれば入れ歯になるのは仕方がない? ~日本と北欧の比較~
厚生労働省は日本人の歯の健康度を調べるために6年ごとに大規模な調査(歯科疾患実態調査 )を実施しています。最近では平成23年に4,000人以上の市民を対象に歯科疾患実態調査が行われました。
この調査で目を引くのは、40代前半の日本人と70代前半の日本人を比較すると歯の本数が10本以上減っていることです。
お口の中で10本以上の歯が無くなってしまうと、取り外しが必要な部分入れ歯を使わざるを得なくなる場合がほとんどです。平均で10本以上の歯が抜けているわけですから、むし歯や歯周病にかかりやすい方は総入れ歯になっていても不思議はありません。
今の日本人で歯みがきの習慣がない方はまずいらっしゃらないはずなので、ご自宅で歯を磨いているだけでは歯を健康に保ち入れ歯を避けるのは難しいということになります。歯を悪くせずに健康な状態で過ごすための予防について日本でも最近関心が高まっていますが、北欧では数十年前からむし歯や歯周病にかかることを防ぐ方法が研究されていました。
イエテボリ大学(スウェーデン)で行われた有名な臨床研究では、およそ3か月ごとに歯科医院で定期健診と歯科衛生士さんのオーラルケアを受け続けた患者さんは30年経ってもほとんどの歯を残せることを証明されました。
具体的な数字をお知らせすると、日本人は40代前半から70代前半の間に『10.5本』減っていますが、北欧でメンテナンスを受け続けた方々は30年間で抜けた歯がたった『0.6本』だったのです。
イエテボリ大学で行われた研究の主要なメンバーで、PMTC等のオーラルケアとお口の状態のチェックを30年続けて、歯のなくなる本数を0.6本に抑えた歯科衛生士のブリギッタ・ニーストレン先生のセミナーが2015年に東京で開かれました。
予防先進国スウェーデンで素晴らしい結果を収めた歯科衛生士さんの講義と実習が受けられるということで、松田歯科医院からは歯科衛生士さんにPMTCクリニカルコース・セミナーに参加してもらいました。
セミナー報告を読むと、患者さんがご自身でお口の健康を守っていただくためにはむし歯や歯周病を引き起こすプラークが残りやすい場所を理解していただくことが重要なのがわかります。
松田歯科医院ではメンテナンスを継続していただいている患者さんに、プラークが落とし切れていない場所が一目でわかるプラークチャートをお渡ししています。
『患者さんの歯を97.7%残すことができる本当のPMTC』
(平成27年10月11日)
講師 ブリギッタ・ニーストレン女史
《PMTCまでのキーワード ・流れ》
○自己診断
患者さんに自分のリスク部位を確認してもらう
むし歯、歯周病
どこが悪く、 どの位進行しているか?
→レントゲンをみてもらい説明
プラーク
歯のどの部位にどのくらいの量が残っているのか?
→染め出し液を使用しプラークチャートや口腔内カメラにて説明
歯周ポケット 、脱灰
→どこに生じているか、患者さん自身がリスク部位を把握できるまで説明、できるだけ写真で確認してもらう
○自宅でのセルフケア
患者さん責任を持って行ってもらう。毎日リスク部位のプラークを減らしていくことが重要
→具体的にどのような方法で行うか、メモをお渡しする
◎リスク部位が歯と歯の間にある場合
フロスや歯間ブラシを使用していただく→歯ブラシで全体的に清掃
○歯科医院で行うデブライドメント
歯周ポケット内のバイオフィルムの破壊と取り残されたプラークの除去→歯ぐきから出血が見られた部位は念入りに
○PMTCの注意事項
・患者さんの歯ブラシで表側はよく磨ける方がほとんど
・歯と歯の間はセルフケアでは難しい
→エバチップ、フロス等を活用して歯科衛生士が清掃する
◎予防を始める年齢が若い程、メンテナンスを受ける時期が早い程病気になるリスクが低くなる
◎歯の健康を守るのに年齢は関係しない
◎メンテナンスごとに前回説明したことをどのくらい実行できているか?
歯科衛生士が確認し、お口の状況を具体的に説明する→定期健診では毎回この繰り返しが重要となります